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ドンドンドン!
「キングスー?起きろー!」
ドンドンドン!
まだ夜明け前だった。この時間キングスはいつも絶対寝てる。
誰か来たぞおっさん、起きろー。
また更に育って中型犬に擬態した俺は、キングスのベッドに飛び込んで体の上をべしべし前脚ではたいた。
「ん…なんだモル、朝か」
「キングス遅れるぞー!」
「あっ!」
声を聞いて飛び起きてばたばたと身支度をし始めた。剣に保存食にリュックと必要な物を次々と揃える。
「モル行って来る」
ぎゅうっと俺を抱きしめた。
俺、シリコンゴムくらいに弾力アップしたんだぞ。もうふよふよんってしないんだ。
犬の頭を両手でむっと挟むとキングスは真剣な顔をして、ゆっくり言い聞かせるように言った。
「ちょっと長引くかもしれないから、外に出てなんか食えよ?モルは賢いからわかるな?じゃ、またな」
部屋の窓から、傭兵仲間と走って行く後ろ姿を見送った。
いってらっしゃい。
それからキングスは帰って来ない。
俺、眠くなったら好きなときに寝て起きてしてるから、時間の感覚が怪しい。この家に時計は無かったし。特に客も来なかった。ただ数年経った気はする。
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