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食事は家の周りの野草や虫、伸びすぎた木の枝を食べたりした。この家は小川の横にある森の中だったから、水も困らなかった。狩りや釣りする人の気配がなかったら、外で擬態を色々して遊んだ。
擬態してないと、黒い幻影獣の姿は一メートル近くになっていた。
キングスはどこまで仕事に行ったんだろう。
「おーい。誰かいるかー」
ドンドン!
今日は中型犬擬態だ。前脚でドアを開けた。
「…犬?キングス…は、…やっぱり帰ってないのか?」
見覚えがある顔だった。ああ、俺を燃やすといったアイリだ。だいぶ痩せて頬に傷があり頭には包帯が巻いてあった。軍服か騎士正装か知らないけど立派な服を着ていた。目尻に少し皺があるから三十後半のように見える。ということは十年以上経過したってこと?
ドンッ!
ドアを拳で思いっきり叩き付けた。なにしてんの、キングスの家壊す気?犬の首を傾げた。
「……誰も彼もいなくなってんじゃねえよ!チクショウッ!ルイ、ルイが死んだんだっ。怪我の感染症で呆気なくだよ!…キングス、あんた強いんだろ。前線なのにへらへらして後衛まで行ったり来たりしてたじゃないか…あんたまで居ないのか?あんたまで…。終戦したって、これじゃ、喜べも、しな、ぅ…」
戦争してたの?ルイが死んだ?キングスも?
アイリはその場で踞って、声を押し殺してしばらく泣いていた。
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