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謙芯「実を申せば…
わしは今、『植杉家の当主をやめたい』と思っておる」
謙芯がそう思うのには、本人にしか解らない「深い理由」があった。
影勝・兼継「………」
謙芯「このような情け無い主君で、すまぬな…」
その「力の無い声」は、謙芯が「本心」で言っている事を現していた。
兼継「何をおっしゃいますか。
御実城様はこれまで、充分過ぎる程に閲智後と植杉の為に尽くして来られました。
その御実城様が当主をやめたいと申されたとて、果たして誰がその事を責められましょうか」
影勝「…私も兼継と同じ気持ちです」
謙芯「そうか、そう言ってくれるか…」
兼継(まあ、不安が無いと言う訳でも無いのだが…)
しかし、兼継はそう思っていても口には出さない。
謙芯「…兼継よ。
お主の申したい事は解るぞ。
今わしが当主の座を退いたら、野無長との戦はどうするのかと言うのじゃろう?」
兼継「滅相も無い」
相変わらず、「勘の鋭い」方だ…。
謙芯「その事なら、心配無用じゃ。
わしが思うに、あやつのやり方ではそう長くは持たん。
おそらく、四~五年のうちに破滅する事になるじゃろう」
事実、この四年後の天正一〇年(一五八二年)に悪田野無長は家臣の開智光英の謀反で討たれる事になる。
兼継「成程」
御実城様がそう申されるのなら、問題は無いな…。
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