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この予告状が届いたのは、一週間ほど前。
祖父の葬儀が終わった翌日に、この家の玄関のドアの間に挟まっていたのをメイドが見つけた。
真っ白の無地の封筒には何も書かれておらず、中にはカードサイズの厚めの黒い紙が一枚だけ入っていた。
『一週間後の午後六時、楠瀬家の家宝を頂きに参ります。』
カードにはそう完結に書かれていた。
この予告状を見たとき、ここにいる誰もが誰かのイタズラだとばかり思い込んでいた。
けれど日にちが経つにつれ、不安が募ってきていた。
「もし怪盗が現れたとしても、みらい様は私達がお守りいたします!」
一人のメイドの言葉を機に、他の者達も口々にそう言った。
「それに、盗みに入ったとしても、ここにはもう何も無いはず」
執事の発言通り、ここにはもう何も残っていない。
祖父が残したのは、この家と、私が大学を卒業するまでの資金、そしてそれまで働いてくれると約束してくれた執事とメイド合わせて四人分の給料等が入った預金通帳だけ。
それに通帳類は全て遺産相続で弁護士の方に預けている。
だから予告状に書かれているような家宝なんて物、存在しないはず。
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