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「あのね、美優。私、何度も考えたの。あの時おじいちゃんの部屋に行かなければ、とか、あの時すぐにでも執事の誰かに伝えていれば、こんな事にならずに済んだのかもしれないって。大好きなおじいちゃんの家宝を盗られたくなかったし、私が何とか頑張らなくちゃって、必死になってた。もちろん三人の事は嫌いだったし、何でこんな事平気で出来るんだろうって、思った。けど、関わっていく内に、本当は酷いだけの人達じゃないんだって分かった。確かにやり方は間違ってるけど、彼らなりに怪盗を続けるのには意味があって、それを知ってからは私に何か出来る事は無いのかって、そっちばかり気になるようになっちゃったの。不思議と今はね、三人に会えた事、良かったって思ってる。夕陽さんが美優に対して思ってる事、それは絶対嘘なんかじゃないと思うよ。最初から夕陽さんは誰よりも優しかった。……他の二人と違って」
「……は? 最後の何? まるで俺達二人だけ最低みたいな言い方して」
陽希が眉をぴくぴくさせながらこちらを見る。
「あ、ごめん、間違った。青葉は口が悪いだけで酷い事はしてこなかったから、最低なのは陽希だけだったね」
「……このやろー」
舌を出す私に、陽希は突っかかっていこうとするが、それを青葉は止める。
「やめろ、陽希。本当の事なんだから仕方がないだろうが」
「おい青葉、何ちゃっかり乗っかってんだよ」
今度は青葉に向かっていこうとする陽希を見て、ふいに美優は口元を押さえながら笑いだした。
「やだなぁはる君。そんなんで一々怒るなんて、大人げないよー? ね、美優ちゃん」
「あの、笑って良いのか分からないんですけど……でも、ちょっと可笑しくて、ふふ、ごめんなさい」
美優に笑われた事が恥ずかしかったのか、陽希は腕を組むと皆から顔を背けた。
その様子に、再び笑いが溢れた。美優も夕陽も、私も。青葉も少しだけ笑みを浮かべ、笑った。
みんなで笑い合える日がくるなんて、思ってもみなかった。まだ全てが解決した訳じゃない。けどこの時は、ただ純粋に笑っていようと、そう思った。
ようやくみんなの笑いが収まった頃、最初に口を開いたのは青葉だった。
「……夕陽。さっき、怪盗を辞めるって言ったよな? 自分が怪盗だと名乗って罪を償うって。それは、俺達三人がやってきた事を全てお前一人が背負うって意味で言ったのか?」
夕陽は青葉の顔をしばらく見た後、静かに頷いた。すると青葉は大きくため息をついて言った。
「お前は馬鹿か? そんなの俺達が納得すると思ってんの?」
「思ってないよ。だから本当は僕が一番に家宝を見つけたかったんだ。そうしたら青葉達だって……」
「ふざけんな。もしそんな事したら俺はお前を一生許さない。お前が怪盗を辞めるって言うんなら、俺も辞める。お前一人だけに良い顔はさせない」
青葉の言葉に夕陽は焦ったように目を向けた。
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