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私の絶叫で幕を閉じた家宝探しの日から一ヶ月後、私は初めて陽希の住むマンションへと訪れていた。
一階でエレベーターが来るのを待っていると、タイミング良く中から美優達が降りてきた。
「あ、みらいちゃん!」
「美優! それに夕陽さんと青葉も」
「やっほー、みらいちゃん」
ニコニコと笑顔を向ける夕陽と、相変わらず仏頂面の青葉に向かってちょこんと頭を下げた。
「……もしかして、美優達も陽希の家に?」
「うん、私は夕陽様の付き添いで。ようやく一段落ついたんだって」
「そっか、だから……」
昨日いきなり陽希から連絡が来た事を思い出し、私は納得した。
「みらいちゃん、しばらくはる君と会ってなかったんでしょ?」
「あ、うん。学校でたまに見かけた事はあるけど、直接会うのはちゃんとけじめをつけてからって言われてたから……」
「へぇ。はる君、意外と真面目だね」
「こうと決めたら絶対貫き通すからな、あいつ」
「さすがです、陽希様! けど、みらいちゃん寂しかったんじゃない?」
心配そうに私を見る美優に、私はぶんぶんと顔を横に振った。
「寂しいなんてまさか! しばらくあの悪魔顔を見なくて良いと思ったら逆に清々したもの」
「あー、みらいちゃん強がってるー」
からかってくる夕陽を軽く睨むと、もう一度美優を見た。
「美優の方こそ、上手くやってる? 夕陽さん、浮気とかしてない?」
「ちょっとみらいちゃん、それ聞き捨てならないんだけど?」
夕陽は頬を膨らませている。それを見て美優はくすりと笑う。
「だって夕陽さん、からかうんだもん。その仕返し」
「うわ、みらいちゃん酷い。僕はいつだって美優ちゃんひとすじなんだから。ね、美優ちゃん」
美優の手を握り笑顔を向ける夕陽を見て美優は恥ずかしそうに頷いた。その様子を見た青葉がため息をつくと、夕陽の頭を小突いた。
「そろそろ行くぞ」
「いったぁ! 何すんだよ青葉」
頭の後ろを押さえながら夕陽は青葉を睨む。
「俺が止めないと、お前ら永遠にここで話し続けるでしょ」
「なんだよ、青葉だってみらいちゃんと話したいくせに」
思いっきり睨んでくる青葉に、夕陽はべーっと舌を出した。
「まぁいいや、どうせまた学校で会えるし。それじゃあ僕達行くから」
「みらいちゃん、また学校でね」
夕陽に手を引かれ去っていく美優に向かって手を振り返す。一気に静かになったエレベーター前で、青葉がゆっくりと歩き出した。
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