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「あの、青葉」
呼び止めると青葉は顔だけこちらに振り返った。
「何?」
「三人のけじめについての事なんだけど……怪盗である事、バラしたんだよね?」
家宝探しが終わった後日、今まで盗みに入った家の人達に自分達の正体を明かす事にしたと、夕陽から聞いていた。普通であれば三人は許されるはずはなく、学校にもその話しは伝わるだろうから退学は覚悟していたと思う。けれど三人が怪盗として盗みを働いていた事を知る者は、私と美優以外いまだに誰もいなかった。
「……どうなったの?」
不安げに見ると、青葉は体をこちらに向けた。
「陽希から何も聞いてないの?」
「うん、聞いてない。連絡とったのも昨日が久しぶりだったから……しかもショートメールでここに来いって書かれてただけ」
「なら、直接陽希から聞けば良い。あいつも、その為に今日あんたを呼んだんだろうし」
「うん、そうだよね……」
浮かない顔で頷く私を見て、青葉はため息をつく。
「話しを聞く前からそんな落ち込んでどうすんの。あんたが落ち込もうがどうしようが、結果は変わらない。俺達はこれで良かったと思ってるし、そうさせたあんたにも感謝してる。変に責任を感じる必要なんて無い」
そう言うと青葉はこちらに近づき、俯く私の頭の上にポンと手を置いた。
「……いつまでもここにいると、あいつが拗ねる。早く行ってやれ」
「うん……ありがとう」
青葉は静かに微笑むと、私から離れた。そのまま背を向けて去ろうとするも、思い出したようにこちらを振り返った。
「そうだ、陽希にも伝えといて。今回は身を引くけど、諦めたつもりじゃないから油断はするなって」
「……? よく分からないけど、そう伝えればいいの?」
「……分かんないならそれでいい。陽希には伝わる。じゃあもう行くから」
それだけ言うと、青葉は私に背を向けてエントランスから出て行った。
私はしばらくその場で青葉の言葉の意味を考えたが、二人の間で交わされた話しの内容なんて私に分かるはずも無く、考えるのは諦めてエレベーターへと乗り込む事にした。
陽希の住む部屋の階へと着き、教えられた部屋の番号を探すと、奥から二番目の部屋でその番号を見つけた。そのまま呼び鈴を押そうとしてふと手を止める。
そういえば男の人の部屋って今まで入った事がない。中がどんな感じなのか気にはなるけど、緊張もするな……。
呼び鈴に指を押し当てたまま動けずにいると、扉が僅かに開き、中から陽希が顔を覗かせた。
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