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「……ねぇ、陽希。あの後ってどうなったの? 夕陽さんから、自分達の正体をバラしたって聞いたけど」
「あぁ……うん、言った。俺達の正体を知りたい奴はここに集まれって、日時と場所を書いた封書を今まで盗みに入った事のある家に全部入れてきた。そうする事で警察が動き出すのも覚悟して、俺達は指定した場所に行った。あの時は結構人いたなぁ。俺あんま緊張しないんだけど、さすがにちょっとビビった」
そう言って陽希は笑っている。
「……やっぱり、警察はいたの?」
恐る恐る尋ねる私に、陽希は首を横に振った。
「いや、いなかった。あそこにいた奴ら全員、誰もそんなの呼んじゃいなかった」
視線を下に向け、陽希はため息をついた。
「いっそ警察に突き出してくれればスッキリしたのに……。俺達の話しを聞いて怒る奴が、誰一人としていなかったんだよ……」
「え……」
「それどころか頭を下げられた。自分達が悠々自適な生活を送ってる中、好きな物も買えずに貧しい生活を送ってる子ども達がいる事を、俺達のおかげで気付かされたと、あの中のリーダー的な奴がそう言った。驚きすぎて俺達三人しばらく固まってたけど、罪を犯した事にかわりはないし、俺達も引き下がる訳にはいかなかった。だから言い返そうとしたら、先にそいつがある条件を言ってきた」
「……条件?」
陽希がこくりと頷く。
「俺達が盗んだ物に関しては、そのまま俺達経由で施設に寄付した事にしていい。そのかわり、俺達にはこのまま星南学園で一等星として通い続け、無事に卒業しろって」
「え、ま、待って、どういう事? そんな条件、その人達にとっては何も得することなんて……」
「あったんだよ、そいつらにとっては。星南学園は有名で、そこに自分の子どもを入れたがる親は大勢いる。その中でも一等星って言うのは、全生徒の憧れでもあり、夢でもある。一等星になりたいという子どもの夢を、俺らに壊して欲しくなかったんだよ。一等星である俺達が実は怪盗してました、なんて、最悪すぎるだろ。それだけで星南学園のイメージは悪くなる。今通ってる生徒達も良い目で周りから見られなくなる。だから子ども達を守る為にこれからもみんなの憧れの存在のままでいて欲しいと言われたんだ」
陽希は悔しそうにギュッと拳を握りしめている。
「自分達の罪を公表して盗んだ物も返せばいいって、そう単純に思ってた。だから、俺達の行動のせいで影響を受けてしまう奴らがいるなんて事、考えもしなかった。結局、最後まで周りが見えてなかったんだよ、俺は……」
「陽希……」
陽希はこちらに目を向ける。
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