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「忘れてないよね? じいさんの家宝を俺が盗んだ事。これだけは何があっても絶対手放す気ないから」
陽希は笑みを浮かべると再び顔を傾け、先程よりも優しく唇を押し当てた。私の手に触れると指を絡めそのままソファへと体を押し倒す。
「……あの時つけたやつ、消えてるね」
唇を離した陽希が、私の首元にそっと触れる。それだけの事なのに、触れた箇所が酷く熱く感じ、じっと見つめてくる陽希の視線から顔を背けた。
「……あれから一ヶ月経つんだから、消えるに決まってるでしょ。ようやく消えてくれてホッとしてるんだから」
あれから何度夕陽にからかわれた事だろうか。あの時の事を思い出し私は表情をムッとさせた。
「駄目じゃん、それじゃ。消えたら意味が無い。悪い虫が寄り付かないようにする為のものなんだから」
そう言うと陽希は指をゆっくりと動かしていく。
「今度はどこにつけようか? 前よりも目立つとこにする? みらい様の好きな場所につけてあげる」
「……ひゃっ」
そろそろと動く陽希の指に反応し、思わず声を出す。
「あれ、もしかしてこれだけで感じちゃってんの? やらしー」
「ち、違うってば! くすぐったいからそれやめてよ!」
顔を赤らめて声をあげる私に、陽希は口の端をあげる。
「反抗されると、余計いじめたくなるんだけど」
「あ、悪魔……」
「ん? 聞こえない」
楽しそうな笑みを浮かべながら、陽希は私の首元に顔を寄せると、キスを落としていく。リップ音を鳴らしながら徐々に移動していくと、前回つけられた側とは反対の首元に強い痛みが走った。
「っ……!」
「今度はこっちだから」
顔をあげニヤリとしてみせると、再び唇を重ねた。
「んっ……はる、き」
静かな部屋に、唇を重ねる音と二人の息づかいが漏れる。徐々に激しくなっていくキスに、体からどんどん力が抜けていった。息もつかせない程のキスに、呼吸が苦しくなっていたが、やめて欲しいとは思わなかった。
このまま、陽希に全てを委ねてしまいたいとすら思った。
前と変わらず陽希の事は悪魔の様な男だと思っているが、私はこの先も陽希と一緒に居たい、そう強く思っていた。なんだか悔しいけど、私は本当に陽希の事が好きなのだと改めて分かってしまったのだ。
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