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六時を告げる音楽が、部屋中に響き渡った。
皆一斉に身構える。
どんな風に現れて、どのように盗みだすというのか?
しばらくすると音楽が鳴り止み、皆の息づかいだけが聞こえた。
どのくらいの間そうしていただろうか?
気づけばもう半になろうとしていた。
「……来ない、ですね?」
何の物音も聞こえず、徐々に緊張が緩んでいく。
「やっぱりイタズラだったんでしょうか?」
「その可能性もありますね。全く、人騒がせも良い所ですよ」
メイド達は緊張の糸が切れたように、その場に座り始めた。
「皆さん、今お茶を淹れますね」
そう言って立ち上がろうとした私を、隣に座る執事が制した。
「みらい様、それは私が」
ニコリと微笑まれ、私は申し訳なさそうに頭を下げた。
「あの……この家には家宝なんてものは存在しないと思いますし、この予告状もきっと誰かのイタズラだと思います。なので、皆さんこの後はいつも通りに過ごしてください」
私の言葉に皆ホッとしたように頷いた。
やっぱりイタズラ、だよね?
私はカードをもう一度見つめた後、静かに封筒の中にそれを閉まった。
その後はいつも通りの穏やかなティータイムが続き、徐々に夜が更けていった。
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