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午後八時半、お風呂から上がった私は一人広い廊下を歩いていた。
二階にある自分の部屋へと続く階段をゆっくり上りながら、胸元で光るペンダントをそっと触る。
先月祖父から貰った物で、中が開くような作りになっている。
その中には祖父が私をおんぶしながらこちらを見ている笑顔の写真が入っており、祖父が亡くなってからは毎日肌身離さず身に付けるようになった。
私には両親が居ない。
その為孤児院にいた私を、祖父が引き取ってくれて、今にいたる。
祖父も早い内に奥さんを亡くし、寂しかったんだと思う。
たくさん愛情を注いでくれた祖父の笑顔が今でも鮮明に浮かぶ。
私はペンダントを閉じると、最後の階段を上りきった。
その時、私は左側から物音がすることに気がついた。
……何、何の音?
私は恐る恐る廊下を進み、音が聞こえる部屋の前で止まった。
メイドさん達、かな?
でも、この部屋は祖父の書斎室。
掃除以外でこの部屋に入る理由なんてないはず。
それにこんな時間に掃除なんてするはずないし……。
私はそっと扉に耳を当てる。
「…………!」
慌てて扉から耳を離す。
やっぱり、誰かいる。
それに一人じゃない。
執事の内の誰か……?
私はノブに手をかけると、音をたてないよう静かにドアを開けた。
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