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さっきから家宝とか言っているけれど、この人達、もしかしてただの泥棒じゃなくて……。
「で、その子どうするの?」
男の人が私を指差す。
途端に鼓動が早くなる。
「……さぁ、どうしよっか」
私の耳元で囁く声にぞわりとした。
……でも、さっきから違和感を感じていた。
この声、どこかで聞いたことがあるような……。
と、それよりいい加減口元を押さえている手をどかしてほしい。
段々と息が苦しくなってきた……。
私は身をよじり、塞がれている手から逃れようとした。
「……はる君、そろそろ離してあげたら? その子苦しそう」
男の人にそう言われ、私の口元を押さえていた手が緩んだ。
「大声出したら、承知しないよ?」
そう囁かれた後、ようやく口元から手が離された。
私は咳込みながら、呼吸を整える。
「さてと……」
私を押さえていた男の人は腕の拘束を解くと、私の背中を押した。
突然のことに、私はよろめき前のめりになる。
それを目の前にいた男の人がそっと支えた。
「はる君、女の子には優しくしないと駄目だよ?」
そう言って男の人は私から離れる。
「もう十分優しくしたさ」
そう言って男の人は小さく笑った。
私はゆっくりと顔を上げ、男の人の顔を見る。
みるみるうちに目が開かれていく。
「ね、みらい様?」
そう言って男の人は私に笑顔を向けた。
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