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私に向かって笑顔を向ける男の人の顔を凝視したまま、私は固まっていた。
どうして……?
後ろの扉に寄りかかり、腕を組みながら男の人はこちらを見ていた。
「……皆を裏切ってたの?」
ようやく絞り出せた言葉。
信じていたのに。
私以外の皆だって、あなたのこと信用していたのに。
さっきだって、私に温かいハーブティーを……。
男の人はかけていた眼鏡をスッと取ると、視線を私に向けた。
「ごめんね、これが仕事だから」
整った綺麗な顔を私に向け、ニッコリ微笑む。
なんとも言えない感情に、私は視線を下げた。
そしてポツリと言った。
「……予告状を入れたのは、あなたなんでしょ?」
「そうだよ」
「じゃあ、やっぱり……」
私はもう一度顔を上げる。
「……あなた達が怪盗D」
男の人はくすりと笑った。
イタズラなんかじゃなかったんだ。
予告通り午後六時には行動を起こしていた。
二人が盗みを実行し、もう一人は私達を見張っていた。
私達は気づかないうちに騙されていたんだ。
けど……。
「家宝、見つけてないんでしょ?」
私は目の前の男の人を真っすぐ見つめる。
ここで負けちゃいけない。
祖父が残してくれたこの家は、私が守らなきゃ。
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