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予告状
午後五時半。
その場にいる者全員が、ある一点を見つめたまま動かないでいた。
時計の音だけが辺りに響いている。
私は拳をギュッと握りしめ、テーブルの上に置かれた物を凝視していた。
どうしてこんな物が私達の元へと来てしまったのだろう?
先日、祖父の葬儀を終えたばかりだというのに。
「みらい様……」
私が座るソファーの横が沈むと、ふわりと良い香りがし、肩に優しく手が置かれた。
俯いていた顔を上げ横を見ると、執事の一人が眉尻を下げ私を見ていた。
確かこの人は、祖父が亡くなる少し前にここに来たばかりの新人だ。
メガネをかけていて、見た感じとても若い。
執事はそっと口を開いた。
「みらい様が落ち着きますようにと、私が淹れたハーブティーでございます。ぜひお飲みください」
執事の手にはティーカップとソーサーが握られており、ユラユラと揺れる湯気から安らぐような良い香りが漂っていた。
「……ありがとう、いただきます」
カップを受け取り、そっと口をつける。
温かいものが全身へと広がる。
私が少し落ち着いたのを確認すると、一人のメイドが口を開いた。
「……それで、どうしますか、これ?」
私達はもう一度テーブルの上に置かれた物に視線を向けた。
そこにあるのは、予告状と呼ばれる物だった。
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