金は天下を回る

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今年で四十二歳になる新井は半年前まで都内の電気メーカーに勤めていた。ところが、不景気で雇えなくなったということでリストラされた。 新卒で入社してから二十年間必死に働いてきたのに……。十年以上働いてて結果を残してない奴はたくさんいる。なのになんで俺なんだ。 新井は結婚しており六歳になる娘もいた。妻とお金のことで話し合いになり、当面は退職金と今までの貯蓄でやりくりすることとなった。 次の仕事先を見つけなればいけないと思っていても、身体がそれを拒否した。焦りと不安が募り、うまくいかないことでストレスがたまる。酒を飲む量は日に日に増えていった。あるとき、妻と口喧嘩になり、酒のせいもあってか暴力をふるってしまった。それから一週間もしないうちに妻は娘を連れて家を出て行った。それで枷が外れ、以前にも増して金づかいが荒くなった。 当然、貯金は減る一方でいつしか底を尽きようとしていた。 金融会社に金を借りるようになり、パチンコで金を使い切る。今度は別の金融会社に借りる。その繰り返しになり現時点で借りている金額は五十万円を超えた。しかもその返済期限は明日だった。まさに崖っぷち、ギリギリの状態だった。
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