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「金を返すのは仕事が決まってからでいいって、言ってただろ」
新井は語気を強めた。
「それはお前がすぐに働くと思っていたからだ。電話で聞く限り、全然決まる気配が無いじゃないか」すぐさま金田が言い返した。
「来月から働こうと思ってたんだよ。アルバイトでもいいからとりあえず働くつもりなんだ。それからでいいだろ、な?」
「本当だろうな、それ」金田が目を細めた。
「ああ、誓ってもいい」
「じゃあ、証拠を撮らせてくれ」
金田はカバンからビデオカメラを取り出した。かなり前から使用しているのか、所々に傷がある。会社で行事があった際に使用しているのを何度か見たことがあった。
金田は何やら操作をしてビデオカメラを構えた。
「後で言い逃れできないように映像に残しておく。金を返すことを宣言してくれ」
そこまでするか、と思ったがここで断ったら面倒くさいことになるのは目に見えている。
仕方なく新井は金田に従った。
「今まで借りた金は必ず返す」
「オーケー。もし逃げたらこの映像を警察に突き出すからな」
こちらを睨んだあと、金田はビデオカメラをしまって歩き去った。
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