序章 朝上玄夢

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この世界に「悲劇」は欠かせない。 ある者は学業に励み、ある者は土に苗を植え、 ある者は荷物を運び、ある者は筆を走らせる。 人は「幸福」な生活を送るため、「役割」をもって文明を築いてきた。 人は誰しも「役」をもって生きている。 では、皆が同じ「幸福」を得ているか。 いいや、違う。 「幸福」とは、境遇ではなく自身の心の持ち方で決まる。 一握りの富で「幸福」を感じる者もいれば、一国の富で「不幸」を感じる者もいる。 前者は、社会に広く「平等」をもたらし、 後者は、社会に広く「格差」をもたらす。 人類が目指す「桃源郷」が、誰もが「幸福」を得られる世界とするならば、 大きな「幸福」を得ようとする後者は不要である。 ゆえに、この世界に「悲劇」は欠かせない。 「悲劇」は悲しみ、怒り、恐怖など「負の感情」によって、 人の「幸福」感度を低下させる。 つまり「悲劇」を欲深き者たちに与えることができれば、
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