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街の盛り場の外れの小路を一本入った場所に佇む、年代を感じさせるビルの二階。
おおよそ外見からは、そこにバーが在るとは思いもよらない、喧騒から離れた所にそれはある。
Kneipe
ドイツ語で酒場を表す店の名前を挙げるのは、此また年代を感じさせる木製のドアに嵌め込まれた硝子戸に浮かぶ白い文字だけだ。
そして俺はそんな店の3代目マスター 篠田聖弥。
今日は週の中日とあって客足は緩やかなのだが、カウンター席で息巻く女性のお陰で少々賑やかな夜だ。
どうやら数日前に男と別れたようなのだが…
「で、天音(アマネ)は、なんで浮気してるって気づいたのよ」
「アイツさ、浮気してる時って、大概携帯の電源を切ってるの。
で、最近電源切れてる事が続いてたんだよね。
ほら、今回で4回目の浮気だった訳でしょう。いい加減気が付くっての」
そう言うと天音さんとやらはグラスを煽る。
あまりに男らしい飲みっぷりに拍手したくなる程だ。
「だからさ、電源切れてた次の日の朝、アイツのマンションに突撃してやったの」
「嘘でしょ…」
「嘘じゃないわよ。でね、ドアの前に立ったらタイミング良く浮気女が出てきたの」
呆気にとられて目を見開いていた連れの口元が微かに緩む。
興味津々ってところなんだろうなって、聞き耳立ててる俺もか。
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