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0.すべての始まり
「死にたい」と考えるのは普通ではないのだろうか。いや、考える人だっているだろう。日々の生活に飽き飽きしてきた人とか、いじめを受けている人とか、楽しくない人生を送っている人とか、苦しいことがあった時とか、悲しいことがあったりした時。「消えてなくなりたい」と考えない人は、まずいないと僕は思う。
人間はそういう生き物であるからだ。誰かに認められ、愛され、守られ、頼られ、頼り、信頼し、疑い、成長する…。その中に、「絶望」や「喜怒哀楽」が無い状況が無いからだ。感情がない人間は、言わばロボットと何も変わらない。
だけどこの日の僕は人間の誰よりも、人に、関係に、世界に、「絶望」を抱いていたと思う。
そよ風の流れに沿うように目にかかりそうな程長い前髪が揺れる。それと同時に、二時間前に飲み干していた缶コーヒーをゴミ箱のほうへと投げた。それは綺麗な放物線を描き、ゴミ箱に吸い込まれるように向かって行く。だが、カツンという金属音と共に外へと零れた。やや力が弱かったらしい。空き缶はゆっくりと地面へと落ちていく。
「……【入れ】」
僕は無意識のうちにそう口にしていた。テレビ中継を見ている人がシュートが決まるのを願うように。
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