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すると、それはその声に応えるかのように重力に逆らって宙に浮いていた。地面について跳ね返ったわけでも、つむじ風が起きたわけでも無い。まるで空き缶自身に意志があるかのように、自然の摂理に逆らいながら浮いたのだ。その浮かんだ空き缶はまた小さな放物線を描くと、カコンとアルミ同士がぶつかった音を響かせながらゴミ箱の中へ入った。
それを茫然と見つめながら、足元に置いていたスクールバックを手に取った。
帰ろう。誰も居ないわが家へ。
考えれば考えるだけため息を付きたくなるが、溜息をしてしまえばすべて抜けてしまいそうな感じがしてやめた。
太陽はもう分度器の形へと近づいていて、地平線に沈んでいく太陽がとても大きく感じられた。目の錯覚だという話をメディアだかで聞いたことがあるなと思いだしながら、今まで座っていたベンチ…もといブランコから立ち上がった。
やや肌寒い風が体に纏わりついてきて、下手をすると風邪を引きそうだ。桜のつぼみがそろそろ開く時期であるとは思うのだが、一向にその気配を見せない。梅の花は昨日の強風でほとんどが飛ばされていってしまった。
そんな肌寒そうな木を見つめながら、スクールバックを肩にかける。
そして公園近くのフェンスを軽々と飛び越え外に着地した。
今日は星が綺麗に見えそうだ。
僕はゆっくりと帰路へと入った。明日からまた平凡で楽しくない日々を繰り返すんだ。
そう考えると今日が終わらなければいいのにと考えるが。
人生そううまくはいかない。
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