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福原 智子(23)(N)
春。始まりの季節。大学を卒業した私は、桜の舞う今日、お気に入りのスニーカーを履いてスーツケースを片手に実家を出た。
<都会近郊 駅前 午後二時前>
SE 街の喧騒
福原 智子
「シェアハウス、か……」
福原 智子(N)
実家を出るだけでも一大イベントだったけど一人暮らしは何かと不安で、新しいことをするならいっそまとめてやってしまおうとシェアハウスへの引っ越しを決意した。
今日は、管理人さんと会ってそのまま引っ越しの手続きをする。想像とは違う流れだけれど、スーツケース一つに全てを詰めた私にはちょうどいいかもしれない。
まばらに歩いている人を目で追ってみる。そろそろ約束の時間だ。
富岡 哲司(67)
「福原智子さんですか?」
SE 街の喧騒FO
福原 智子
「はい。もしかして管理人の富岡哲司さんですか?」
富岡 哲司
「そうですそうです。今日はよろしくね」
M 明るいポップな音楽
福原 智子
「よろしくお願いします!」
富岡 哲司
「うん、元気があって何より」
福原 智子
「へへ。さっきまでは不安だったんですよ」
富岡 哲司
「そうなの?」
福原 智子
「ええ。でも富岡さんが優しそうな方だったのでちょっと緊張がほぐれました」
富岡 哲司
「そうかそうか。君ならうまくやっていけるかもねえ。それじゃあ行こうか」
福原 智子
「はい」
SE スーツケースを引く音 二人分の足音
富岡 哲司
「ところで、不動産屋さんからもらった紙は持ってきたかい?」
福原 智子
「はい、もちろん!」
富岡 哲司
「ハウスに着くまでの間に条件だけおさらいしようかねえ」
福原 智子
「私、ちゃんと覚えてますよ。一つ目は、年齢性別不問、二つ目は一定の収入があること、三つめは必ず一人での入居であること」
富岡 哲司
「バッチグーだね。その中にもう一つ追加してもいいかなあ」
福原 智子
「何ですか?」
M 明るいポップな音楽CO
富岡 哲司
「今ねえ、男性入居者しか居ないんだよ」
福原 智子
「……え?」
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