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かっこん、かっこん――。
本を読んでいる少女が座る揺り椅子の音が響く暗い部屋。その音がふと止んで、隣の机に置いてあるピエロの木製からくり人形が口をカチカチと鳴らした。来客の知らせに、少女は顔を上げた。
栞を挟んで本を机に置いた拍子でホコリが舞ったのがわかる。少女が降りやすいように前に傾いた揺り椅子から立ち上がると、正面の本棚が左右にスライドした。
そこから明るい光が漏れて、本棚に囲われた机と椅子だけがある部屋が露わになる。
中心に立つ少女の黒い髪は腰辺りまで伸びていて、不自然に波打つ。
薄紅色の瞳が、来客した神の姿を捉える。開いた口から放たれたのは、店として当然の決まり文句。
「いらっしゃいませ。付喪神専門店へようこそ」
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