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「説明するとなると難しいのですが……」
ふとした疑問に、少女は少し沈黙してから、小さな声で笑った。話すときの声音とは違うかわいらしい笑い声。
「では、私は何者だと思われますか?」
「え、それはここの店員さんで……」
唐突な質問に戸惑いながらも答えると、少女は首を横に振った。
「素直なお方なのですね。このような年端もいかぬ娘が、一人でお店を切り盛りできると思いますか? もちろん、正確にはここはお店ではないのですが……」
確かに、そもそも彼女は働いていいような年齢ではない。ごもっともな指摘に納得しながらも、さらなる疑問がわいてくる。
「それじゃあ……?」
「付喪神なのです。その時計に住まう方と同じように」
言葉が出ない。今まで会話していたのは人ではなくて。
もうすでに現実が受け入れられていない状況なのに、さらなる衝撃で思考が停止してしまった。
「あなたが? でも、なにかの中に宿るって……」
そこまで言ってからようやくピンときて、思わず声をあげてしまった。
「ええ、私はこの建物に住まう付喪神。ですから、この建物の中に入ってきた由奈さんや付喪神様のことはある程度把握できるのです。もともとこの建物は普通の骨董品店として人間が営業していましたが、他の骨董品店とは違って〝いわくつき〟の一品が取り扱われていました。霊感のあったこの建物の管理者は、その中から付喪神様が宿るものだけを買い取って、こうやって集めていたんです。その頃はまだそれだけのことでした。私の存在は認知されていましたが、ほとんど言葉を交わすことはありませんでした」
おもむろに店の方へ戻って、近くにあった万年筆を手にとる。
「この万年筆は男性、さらには彼の娘に受け継がれ大切に使われていましたが、ボールペンが普及すると同時に使われなくなってきてしまいました。では、この万年筆はどういった日々を過ごしたのか、見てみましょうか」
そう言って、私にてきとうに本を取るように言ってくる。言われるがまま黄土色の本を引き出して開くと、そこにはなにも描かれていなかった。
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