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間合いが大きければ大きい程、当然タイマン勝負では有利になるのだ
だが、それは春日源五郎も承知の上だろう
春日源五郎は上段の構えにて向かい合うのに対し日高雅弘は足を広げ腰をぐっと落とし木刀を左腰に構える
居合いの構えだ
源五郎は上段の構えにて雅弘の実力を少しずつ試しながら長期戦にて勝負を決めようとしているのに対し、雅弘は一撃必殺の短期戦で勝負を決めるつもりなのだ
その様子を見た板垣信方は顎に手をやり
「ほう…この2人の戦い方は正反対だのう…」
そう呟く板垣に対し晴信が答える
「やはりあの者、ただ者ではないな…少なくとも公家なんぞではない」
そう言う晴信に対し板垣も返す
「あの者が北条の間者だとしたら素直に相模の者だとは言いますまい、となれば信濃のどこぞの者か…」
すると晴信は前屈みになり頬杖をつくと
「ふむ、そう思う事も出来るが、どこぞの間者だとしたら、あの様な珍妙な格好をするかのう?」
そう言う晴信に対し板垣は腕を組み
「確かに…あの者の珍妙な格好の上、その身体から漂う心地良い香りがする事からどこぞの公家の放蕩息子かとも思っていましたが、あの見事な構え…やはりどこぞの武者とも考えられますな…」
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