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空は穏やかな晴れ間を見せている。しかし反対に黒猫のノヴェルは壁によりかかりながら、目の前の光景を眺めていた。
人ひとりいない、殺伐とした異様な光景は、かえってここ数日の現実を受け入れやすかった。
「さて、どうしたものか……」
呟き、空を仰ぐ。
これまでの事の顛末はなにか、ノヴェルは記憶を遡る。
数日前の昼間も、ノヴェルはこの場所にいた。普段と変わらない平穏な日常で、ノヴェルはいつも通り、待ち惚けていた。
「お待たせ~!」
ご機嫌な声で誰かが、話しかけてくる。ノヴェルは溜息を一度つき、声がした方向を向いた。
うんざりな表情をするノヴェルに対し、声の主は艶やかな顔をしていた。
「行こっか。」
彼女はノヴェルに近づきそう告げ、二人は人が少なそうな路地裏へと歩き出す。
人が一人もいない事を確認した後、ノヴェルは言葉を発した。
「言葉通り待ちくたびれたよ。」
「久々の取材に、ちょっと盛り上がっちゃったわ。」
彼女は舌を出してごまかし笑いをする。
「ごめんなさいね。でも、お陰様で良い記事が書けそうだわ!!」
「そうかい。それは良かった。」
ノヴェルは小さな溜息をついた後、そう答えた。
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