人工出産システム

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「熊木田さんが会いたいなんて、珍しいですね」 武上がそう言うのは当然だった。武上の意向で経済諮問会議に参加しながら、ことあるごとに「無駄な会議だ」と批判していたからだ。 「今日はプライベートなことでお願いに上がりました」 「益々珍しいことではないかしら?」 「お互い忙しい身です。率直にお願いします。総理が出産に当って利用した病院を紹介いただきたい」 「あらまあ、何故かしら?」 武上が熊木田の瞳を覗く。出産の秘密をつかまれることを恐れているように見えた。 「私も子供に恵まれません。先日、宇宙開発事業団の木元さんから総理の噂をうかがいまして、この歳でも父親になることができるかもしれないと、藁にもすがる思いでお願いに参上したのです。当然、その折には十分な選挙協力をさせていただきます」 熊木田は献金を匂わせる。 「私は藁ということですね」武上は笑った。「でも熊木田さんの申し出は、とても嬉しいですわ。そう言う条件ではお断りできませんね」 総理ほどの政治家でも献金の魅力には負けてしまう。党の金を使い込んだとしたら穴埋めにも金が必要なはずだと、熊木田は心中笑った。
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