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熊木田夫婦は殺風景な部屋に案内された。中央に大きなテーブルと6脚の椅子がある。奥に扉があって、その向こうからブーンという機械音がしていた。
「ここが事務所で、隣の部屋が研究所です」
部屋の隅におもちゃがあり、朱音の腕を離れた娘がおもちゃで遊び始めた。
「娘さんですか?可愛いですね」
小百合が目を細める。
「アオイという名です。私の第1号の作品です」
「作品ですか……」
熊木田は、自分の娘を作品と紹介した朱音の顔を見つめてしまった。科学者とはいえ、変わり者だと思う。子供の教育上はどうなのだろう。そんな気持ちもわずかにあった。
「あの子は私の血を引いていますが、腹は痛めていません」
「代理出産ですか?」
「代理と言えば代理ですが、そうではありません」
「どういうことですか?」
「私の研究について、武上総理から聞いていませんか?」
「ええ。なにも」
熊木田の胸に不安が広がった。得体のしれない研究の実験台にされるような気がした。
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