継ぐ者

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「妊娠の確率を高めたい。30分はベッドに横になっていなさい。2、3時間、寝ていってもいい」 寝室専用のサニタリーで汗を流した熊木田は、ベッドに横たわるエイミに指示して部屋を出た。階段を下り、リビングのソファーに掛けていた小百合に銀行の袋を差し出す。 「何です?」 「俺は仕事に戻る。彼女が下りてきたら、渡してくれ」 自分で渡すべきかと思ったが、金は妻から渡して主従関係を明確にしておくべきだと考えた。これから妻とエイミが、顔を合わせる機会が増えるからだ。 「説明してください」 小百合は要求したが、熊木田は玄関に向かった。 「重要な会合がある。人工的に子供をつくる方法があると噂で聞いた。今日、会う人間がそれを知っているかもしれない。こっちが上手くいくとは限らないからな」 熊木田は表に出ると、自動運転車に乗り込んだ。
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