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1 少し冷ややかな事務的声
放課後、夕陽に照らされた教室。周りを囲む机は仄かな光に照らされ、微かに光を反射させる。
人を呼び出すことは久しぶりで緊張する。9年前が最後だろうか。
緊張するのは呼び出したのがあの楓先輩だということもあるだろう。
「お待たせしました」
教室の後ろの扉が開く音と共に楓先輩の少
し冷ややかな事務的声が聞こえる。
まだ、その距離感か……。
やはり、少し悲しい。
こちらも彼女に事務的笑顔と事務的声で応じる。
「いえ、そんなに待っていません。それにお時間取らせて申し訳ありません、楓先輩」
後ろから安堵とも呆れとも取れるため息が聞こえる。
そんなに怒らせてはいないのかと、少しだけ安心する。
でも緊張は溶けない。
いまから、することを考えれば。
それから、こちらへ向かうリズミカルで懐かしいシューズの音が聞こえて来る。
相模原 楓。神ヶ原高校2年生。彼女は成績優秀らしく、 神ヶ原高校史上の天才と呼ばれている。
そして、彼女の長髪は鮮やかに光を反射し、体型はしなやかにひきしまり、 けれど胸は大きい、顔も整っている。つまり、美少女な訳である。
この才色兼備な彼女に魅了された男子生徒は少なくないだろう。
そういう僕は日和見大和。神ヶ原高校1年生。
僕もまぁまぁな成績なのでファンなどいない。
ここまで思い返した所で彼女は僕の前に辿り着いた。
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