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なんでだろう――――。
「ここに記された謎を全て解いてみよ」
人形のように端正な顔立ちの男は、威圧的に命令をしてくる権力者にも恐れることなく、冷 たい視線で睨みながらハッキリと言い切る。
「忙しいので、お断りさせて頂く」
「謎が解けた時……我が徳田家に伝わる秘伝の奥義をそなたに譲ろうぞ」
「徳田家の……奥義だと?」
何でこんなことに、なっちゃたんだろう――――!?
◆
事の起こりは、遡ること数時間前――
「きゃっ! わっ! 痛ぁ~い!!」
靴のヒールが突然、取れた。
私、廿里双葉(とどりふたば)二四歳。
生命保険の外交員として、日々飛び込みで契約を取るために挨拶周りに明け暮れている。
外交員になって二年になるけど、契約が沢山取れるカリスマセールスレディには程遠く、キャンペーンのノルマをこなすので精一杯だ。職場の上司からは嫌味を言われることも少なくない。辞めたい気持ちは数時間単位で、湧き上がってくることなんて日常茶飯事。だけど担当 しているお客様は皆良い人で、こんな私の説明にも真剣に耳を傾けてくれた。無責任に担当は下りたくない――これは私なりの細やかなプライドだった。
今日もこれから、新規開拓をしに少し遠方の『アカツキ商店街』まで足を延ばした矢先――――
ボキッ!!
「きゃっ! わっ! 痛ぁ~い!!」
振り出しに戻る――――と、なった訳だった。
「うぅ~! せめて帰る時に壊れてよ~!」
靴に向かって無茶なことを呟きながら、片脚でピョコピョコと飛んで道の端に寄っていく。電柱に手を掛けてバランスを保ちながら、ジャケットのポケットからスマホを取り出し、近辺にコンビニがないかと検索してみると――――
「ない……」
コンビニらしきものが一軒も見当たらなかった。
検索範囲を広げてみても、商店街の中にはコンビニが存在していない。今どきのご時世で、コンビニがない商店街ってあるのだろうか? それとも商店街の力が,強いのか――――。コンビニ一つないだけで、異様な雰囲気を感じてしまう。
「せめて文房具屋くらいはあるよね?」
瞬間接着剤でその場をしのごうと、再び検索をしようとした時――――
「あった……目と鼻の先に」
なんと目の前に、まさに今の私の窮地を救ってくれるために存在しているかのようなお店――――『靴屋』だ!!
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