第1章 猫の缶詰め

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それから、背中、太腿、どこからでも構わないが始めに背骨を取り除いておくと後処理が比較的楽になるので僕はいつも背中から猫を切り開くようにしている。何しろ設備と環境が十分に整えられているわけでもないので、作業員の手作業と目分量で成り立っている工程が非常に多いのだ。 僕はナイフを猫であったものの項に突き立てて、思いっきり背骨に沿って内側の肉を削ぐように切り開く。十分な弾力感のある肉に食い込み内部の空洞と背骨の間を血がタプタプさせるので、僕はクリーム色の洗面器にそれを流し込んで、清潔な水を張った桶にそれを沈めて血が出なくなるまで洗うと、ほとんど見かけは食品と言われれば違和感のない感じになる。 「これが厄介なんだよ。猫も、僕たち人間が食べやすいように、骨がなくなるように進化して欲しいよなあ。きっといつかそうなるだろうなあ」 と僕はぐずぐず言いながらしっかりと手を動かし続ける。僕とチームを組まされている少女は肩を僅かに竦めて目だけ微笑んでくる。彼女は僕の同期だ。新入社員の紅一点でただでさえ目立つ存在だが、彼女の整った顔立ち、少女らしく華奢な身体つきに丸い大きな猫のような目付き、(ここで彼女のことを猫のようと表現するのは僕にとって全く悪意のあることではない。)それから丸い顎と清潔な白い皮膚を持っていた。僕は彼女以上に女としての存在がうまく効率よく生かされている少女はおらず、誰に対しての女らしいイメージというものが彼女に密集している、と考えた。
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