クテンは苦悩していた。

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 トウテンには理解できなかった。トウテンにとって、クテンの役割は、秩序を持って《文章》を終わらせ、世界に均衡を与える役割だと思っていた。  それを放棄すれば、当然『こうなる』。更に悪い事に、最近では雑多な《文章》達が増殖しており、きちんと『終わらせて』やらなければ、意味を中途半端に持ったままどこまでも増加してしまうのだ。  その役割を放棄してしまうなんて。めちゃくちゃだ! 「神族に加えてもらえない事がそんなに不満か!?」 「それもある! だけど、僕はこの役割がもうイヤなんだ!」  万物が増殖を続け、器である世界は、徐々に軋み始めている。世界が雑多な《文章》に埋め尽くされ、やがて破裂して消滅してしまう! 破綻しつつある世界の中で、僕とトウテンがぎゃあぎゃあと言い合っていると、 「何事か」  背後から威厳のある声がする。この声は……!  二人が慌てて振り返るとそこには 「「か、完神様!!」」  この世界の絶対神、完神がおわした。  クテンとトウテンはすかさず平伏した。  世界はまだ、崩壊への道を歩み続けている。 「この騒ぎはなんだ。二神族達も慌てているぞ」 「こ、これは……」  言い淀むクテン。すかさず口を挟むトウテン。 「クテンが己の役割を果たさぬと申しております。その結果がこれであります」  事実だ。クテンの体中から、冷や汗がドッと流れ出す。     
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