クテンは苦悩していた。

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 完神は、この世界の造物主であり、絶対神であられる。何人も逆らう事は許されぬ。 「クテン。事実か」 「……はい。己に課せられた役割に嫌気が差し、私の果たすべき役割を投げ捨て、このような事態を招いております」 「何故」 「己の役割とは、《文章》を殺す行為に他なりませぬ。この世の中の、一体誰が好き好んで命を奪う行為を行い続けられるでしょうか」  あぁ、恐ろしい。完神様に口答えなど。言葉一つ並べるだけでも、己の矮小な存在が消し飛んでしまいそうだ。口の中だって、もうカラカラに乾いてしまっている。  だからといって、ここで妙な折れ方をして意地を曲げてしまっては、今後二度と改善の機会もなく己を偽り、意志を捻じ曲げて生きていかねばならなくなるだろう。  それだけは耐えられない。クテン、ここが己の意地の張り所だ。そう自分に言い聞かせながら、クテンは完神の言葉を待った。  やがて完神が静かに語りかけてくる。 「……クテン」 「はい」 「己の役割の先に、何があるか。考えた事はあるか?」 「……いえ」 「そうか」  しばし沈黙が流れた。その後、完神は言葉を続けた。 「クテン」 「はい」 「頼む」 「……は?」  完神の言葉の意味が分からず、クテンとトウテンは顔を上げた。     
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