クテンは苦悩していた。

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 ……どれ、一つ、私の残された力で、お前達に少しだけ未来を見せてやろう」  言うなり、完神はクテン達の額に手を軽く置き、ウンと力を入れた。  フッと何かの力がクテン達の頭の中に流れ込む。酔っ払ったようにフラフラする。 「後ろを見よ」  完神の声に従い、フラフラしながら後ろを見ると、見た事のない小さな子ども達が大勢いた。  不思議だ……初めて見るはずなのに、僕らはこの子等を…知っている? 「……コロン、カッコ、カンマ、シャープ、スラッシュ……」  口にした事のない名前達。でも、不思議とこれがこの子達の名前だと分かる。  呼ばれた子ども達は、呼ばれた順に元気良く「ハイッ!」と手を挙げながら答える。 「どうだね」  完神の声に、ふと我に返る。子ども達の姿は消えていた。 「完神様! 今のは……?」 「少しだけ未来の映像だ。そしてあの子等はやがてお前達の神族の末席に加わる者達だ。  そもそも私と二神族、お前達新神族は出自が違う。お前達は私から生まれたのではない。  だから、同じ神族になろうなどとするな。最初から叶わぬのだから。  クテン。お前は新神族の長となるべき者。我ら《文字》ではなく、彼ら《記号》を束ねる存在、筋護運(きんごうん)族の長に。     
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