クテンは苦悩していた。

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「そう、僕らに課せられた使命だ。だが……」  僕と君で課せられた使命は、似ているようでまるで違うんだ。  この言葉を、クテンは飲んだ。もう何度も言っているし、言っても仕方のない事だともう分かっている。 「だが、何さ? ……どうにもこれまでの君の話から察するに、この世界の成り立ちがそもそもの問題なのかい?」  そうだ。この世界の成り立ちは大きな問題であり、クテンの苦悩はそこに起因している。 「文字よ、あれ」  神の言葉により、文章の世界は誕生した。  広大無辺、白地の世界に完神(かんじん)と呼ばれる絶対神が存在した。  歩く、手を振る、息をする。完神のあらゆる行為や現象は彼の体中から文字を溢れさせ、それはやがて一連なりとなって白地の世界にだらりと広がっていく。それが意味ある配列、《文章》となった。 《文章》は遍く世界に広がり、やがて大海となり、ひと所に留まった。それは《文面》と呼ばれた。  面という名前の通り、完神から生まれた《文章》は、パタリと地面に落ちて、やがて折り重なっていく。折り重なった一番下は、時折消えてしまった。     
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