クテンは苦悩していた。

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 走り、舞い、歌う。それらの行為によって《文章》がいくつも生まれ、《文面》は華やいだ。  完神だけの世界の頃には、どこかの世界の成り立ちや小難しい内容のみであった。それが、二神族が生まれて以来、より多くの種類の《文章》が現れるようになったのだ。  歌、日記、小説……新しき文章、《文化的文章》と、それ以前の旧き文章、《記録的文章》とが分離する。 《記録的文章》は消えて無くなった訳ではない。一定数は存在するが、しかし《文化的文章》の爆発的増加の前には無いに等しい程であった。  完神は、二神族の誕生を喜んだ。白と黒のみだった世界を、赤、青、緑と自由自在に染め上げていく二神族。二神族は決してお互いに仲が良い関係ではなかったが、完神にとってはどちらも我が子のよう。とても可愛がったそうだ。  完神と二神族によって、世界は加速度的に埋め尽くされていく。 「……僕らの誕生の契機になっていくとはいえ、何ともこの辺の話はイヤなもんだねぇ」 「全くだ。ぞわぞわする」  二人揃って苦笑い。それもそのはずだ。二人は二神族が好きではない。どちらかと言えば、嫌いの部類に入る。  ケンカした、なんて簡単な理由であれば話は早い。が、事はそうではないから面倒くさいのだ。     
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