クテンは苦悩していた。

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 無茶苦茶である。クテン達新神族は、《文章》を寸断し、細切れとして《文面》に秩序をもたらす事を目的として生まれた存在だ。それが生まれついての『役割』なのだ。だのにそれをまるっきり否定されてしまっては、即ち新神族の存在意義をそのまま否定されているのと同義だ。 「それにしても、あいつらは上手くやったよねぇ」  トウテンは呟く。穏やかに、遠くを眺めながら呟いてはいるが、内心は穏やかではない事をクテンは知っている。それはクテンが同じ立場にあり、同じ気持ちを持っているからだ。  そう、ここにいない新神族のダクテンとハンダクテンは、そんな二神族に媚び諂い、やがてその末席に置かれるようになったのだ!  そしたら奴ら、まるで生まれた時から“そう”みたいに、二神族として振る舞い始めた。二神族の後ろに紛れ、クテンとトウテンを寄って集って小突き回し始めた。 「だからといって、あんな風になんてなりたくないけどな」 「ハハッ、確かに」 「……僕らが生まれて100年以上が経った。いつになったら、僕らは正式な神族として認められるんだろうね」 「さぁねぇ。後100年もすれば、もしかしたら?」  トウテンの軽口。当然、明確な見通しなどある訳がない。まるで岸の見えない遠泳に挑んでいるよう。この辛い日々の終わりはあるのか。その苦悩は、クテンとトウテンの共通の物であった。  それでも、クテンはトウテンに本当の悩みは言えなかった。     
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