クテンは苦悩していた。

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 共通の悩みを持ち、同じような育ち、役割、性格であるが、トウテンには絶対に理解できない部分があるからだ。 「さあ、そろそろ休憩を終えて、僕らも僕らの役割を果たさなければね」  トウテンはすくっと立ち上がり、数歩進んだ所で踊り始める。  決して激しい動きではない。両手両足、その運び方は指先まで神経が行き届いており、くるり、くるりと回る足捌きは優雅で、ひらり、ひらりと流れる手捌きは見事なものであった。  そうして踊っているトウテンの一挙手一投足から、点が漏れ出す。その点は無秩序だった《文章》の間に入り込み、世界を上手に切り分けていく。  例えばそこにある花。地面と茎、茎から枝、枝から葉までの境目が曖昧なままに存在していたが、点がそこに入り込む事で綺麗に分離し、色が明瞭となり、より鮮やかに咲き誇るようになった。  トウテンの役割は、《文章》を切り分け、明瞭化するものであった。  クテンは渋々立ち上がり、トウテンから少し離れた所で同じように踊り出す。  クテンの一挙手一投足からは、丸が漏れ出す。その丸は、無秩序だった《文章》達を世界に固着させる。     
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