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私は短大、大学、専門学校、それとも就職をするのか、もう三年生になるというのに決められない。隼が言う通り、私には自由に動く手足があるのに、拘束されているように不自由だ。
何がしたいのか、何をすれば親に喜んでもらえるのか、周りにへつらわなくても良いのか。
……馬鹿みたいな話で笑える。他人を考える時点で、自分の意思なんて潰されてしまうじゃない。
全身に風を感じた。
と、至近距離に、突然、男の子が現れた。裂けるほど口角を上げている。恐怖で喉さえ震えない。この威圧感はそう、あの時と同じ、隼の手が暴走してしまう時と。
私がなにも言えずにいると、その男の子がぼそりと呟いた。
この人は違うよ、黄(こう)。殺さないで。
人をとって食らいそうな形相には似つかわしくない優しい声。
それに呼応するように、表情がおっとりとしたものへ変わっていく。
吊り上がっていた目は垂れ目になり、牙が見えていた歯は小さな口へと納まった。
男の子は首を傾げて、ごめんなさいと笑った。
「あのね、僕、間違えちゃったみたいなの、えへ」
なんだ、この人格破壊人間は。
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