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 ミルクはほんのりと温まり、膜をはっている。隼はこの膜を爪楊枝で掬って食べるのが好きだ。  父が身を乗り出してこちらに、爪楊枝のパックを突きつけてくる。お礼を言って、一本抜いた。  隼は二階の自室のベッドで蹲っていた。こいつはいつも一人で背負おうとする。自分だって持て余している病気を、それでも自分だけで何とかしようとする。  私は息を深く吸って、半開きの扉を勢いよく全開にした。 「隼!」  叫ぶけど、相手は無言を返してきた。  隼の体中が震えている。こいつは今、無意識の意思と戦っている。 「ミルク持ってきてやったよ」  私はベッドに腰かけた。隼がちょこっとだけ顔をずらして、こちらを見る。目に涙が滲んでいた。 「出て行けよ」 「お姉ちゃんって、言ったらね」 「美咲は、美咲だろ」  語尾がぎこちない。相当参っているらしい。私は隼の右腕に触れ、その振動を感じた。 「危ないから。出て行けって」  危険なのは隼も同じだ。この病気は見境がない。隼自身をも殺してしまう。  私は溜息をついた。  
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