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「……は?」
いまサシャムは日本語を話した。
話の内容より、そのことの方に秋哉はびっくりする。
「サシャムお前、日本語を話せるのか?」
「スコシ、ね」
サシャムはわざとらしいカタコトで言って、いたずらっぽく笑う。
「ボクたちはこれだけ似ているから、服をかえてアズハルたちをびっくりさせたいんだ」
「びっくり、……するかなぁ」
たとえばテッペーやカズが、衣装を替えたぐらいで秋哉とサシャムを間違えるとは思えない。
秋哉は首をかしげるが、でもサシャムは、
「驚かせる。スコシ、だけね」
ニコニコと笑っている。
なるほど、他愛ないイタズラってわけだ。
さっき聞いたのだが、サシャムはまだ12歳。
でも身長は秋哉と同じぐらいだ。
人種の違いもあるのだろうが、思っていたよりサシャムは年下で、ちょっとびっくりする。
体つきは一人前だが、思考がまだ子どもなのだ。
しかもサシャムは学校に通っているわけではなく、ずっと家で、家庭教師に勉強をみてもらっているらしくて、つまりは同じ年頃の子どもと遊ぶなんて初めてのこと。
「よっしゃ、わかったサシャム。みんな驚くといいな」
秋哉は言って、自分の学生服を差し出す。
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