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「うげっ、気持ち悪ぃ!」
テッペーはさっぱり、遠慮のない言い方をする。
「アキ、お前もう帰れ。見た目より重傷だ。きっと熱もある」
そう言いながらテッペーは、秋哉の背中をグイグイ押して、せっかく来たばかりなのに、もう帰らせようとする。
「待てよテッペー。オレは平気だってば」
秋哉は抵抗するが、結局ポイッと校舎の外に出されてしまった。
秋哉は、
「……やっぱオレ、嫌われてんのかなぁ……」
けっこう無理をおして登校してきたのに、親友だと思っていた男から、こんな仕打ちを受け、がっくりと落ち込む。
すごすごと踵を返す。
うなだれながら、家に帰っていく秋哉の背中を見送って、テッペーは、
「危ねぇ危ねぇ。うっかりキュンとしちまった」
額に浮かんだ冷や汗を拭う。
「あんな無防備なアキ、放置するわけにはいかねーじゃねぇか。ますますオレが見張っとかないと」
秋哉の学校には、秋哉を虎視眈々と狙うオオカミどもがうようよといる。
その筆頭が、秋哉の幼なじみを名乗っている三嶋カズエ。
油断をすると女という立場を利用して、どんな罠を仕掛けてくるかわかったものじゃない。
「アキを触っていいのはオレだけだからな。もうちょっと警戒させて、アキの拒絶心をMaxにしとかなきゃいけねーな」
こんな身近なところですでに、秋哉は、最大に迷惑な愛をたっぷりと捧げられている。
了
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