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そんな風につらつらと考えていると、テッペーの尻はバスの通路を曲がって姿を消す。
秋哉も急いでバスのステップに足をかけると、
「サシャムさま!」
いきなり後ろから声をかけられた。
日本語だけど、なんだか聞き慣れない響きだ。
秋哉には関係ないので、かまわず乗りこもうとすると、
「どちらに行かれるのですか、サシャムさま」
いきなり強く引き戻される。
「――っと」
転ばないようにバランスを取った。
秋哉が、
「何すんだよ! 危ねーじゃねぇか」
振り返って怒鳴れば、
「これは! ーー失礼いたしました」
3人の男たちが、いきなりひざまずいて頭を垂れる。
「えっ」
確かに転びそうにはなったが、大の大人が地面に膝をついて謝るほどじゃない。
「そんなにしなくていいよ。別にへーきだったし」
自分より年上の人にはちゃんと敬意を払うよう躾されている秋哉は、慌ててひざまずいた男たちを立たせようとした。
すると男たちは、
「おお! サシャムさま。寛大なご処置に感謝いたします」
ますます悪のりのように、今度は地面にひれ伏さんばかりの勢いで頭を下げる。
「……ちょっと」
どうやら男たちは、秋哉を他の誰かと間違えているらしい。
「言っとくけど、オレはそのサシャムさまとやらじゃねーぜ」
だからそう言うと、
「え?」
目を伏していた男たちが顔をあげる。
そしてまじまじと秋哉の顔を見つめてきた。
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