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こんなにもあからさまに見られると、さすがに気まずい。
それにこの物怖じせず、まっすぐに人の顔を見つめるクセはーー。
やっぱり日本人ではない。
ありふれたスーツ姿の、黒い髪黒い瞳の男たちだが、目鼻立ちがくっきりはっきり。
最初に秋哉をサシャムと呼んだ男こそ、日本語で呼びかけてきたし、この場にいても首を傾げるほどの違和感は覚えないが、後ろいる他のふたりは、まだ春先だというのに浅黒く日焼けした顔に、眉と目の位置がものすごく近い。
――彼らは、日本人では、ない。
今、日本人ではないと思った方のふたりが、口を開いて何かを言った。
英語でもない。
だから秋哉には、何を言っているのかさっぱりわからない。
「?」
首をかしげる秋哉に、日本語を話せる男が、
「これは驚いた。本当にサシャムさまではないらしい」
「だからそう言ってるだろう。オレには来生秋哉って立派な名前があるんだ」
秋哉が胸を張ってそう言うと、男は少しだけ微笑むように目を細めて、
「そうですか。私はアズハル・タナカと申します」
自己紹介をしてくる。
その顔立ちの通り日系人のようだ。
この騒ぎに、ようやく担任教師が間に割って入ってきた。
「何の騒ぎですか。あなたたちは?」
それから先生を交えた大人たちは、何やら頭をつきあわせて相談を始める。
秋哉はやっとバスに乗り込むことが出来て、それからテッペーの隣に座って、おとなしく待っていたのだが、やがて、こちらを向いた先生から、
「来生、ちょっといいか?」
また外へと呼び戻される。
先生はさっきアズハルと名乗った男たちを示して、
「この人たちは、今来日しているジェイド王国の方々だそうだ。それで来生、おまえにたっての頼みがあるらしい。先生も一緒に行くから、ちょっと話しを聞いてもらえないか?」
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