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ふと春一を見ると、春一は何かを探すように夏樹を見ている。
その視線に促されるように、夏樹は先を続ける。
「俺たちは兄弟で家族だ。だけど俺は春の相棒。相棒には遠慮なんかしないだろう。だから春は俺には手加減なくむかってきたんだ。無意識に信頼している証だな」
ちょっと自慢げにふふんと鼻を鳴らす。
「どーいうことだよ、それ――」
カッと頬を赤らめて声を荒げる秋哉を手のひらで制して、
「でもな秋、お前は春が守ると誓った弟なんだ」
「……守ると誓った弟?」
「ああ。春は、秋哉や冬依のことは、何をおいても守ると誓っている。だから、春はお前を殴らなかった」
「……」
「お前を守るって意識が春をパーサーカー状態にして、また同時にお前を守らなきゃって本能が春を正気に戻した。ある意味、お前が最強って意味だよ」
「……よくわかんねーよ、そんなの」
秋哉はちょっとふてくされながら呟く。
「守られる弟って、オレ男なのに、そんなの情けねぇよ」
「バカなこと言ってんじゃねぇよ。人間、意識より本能の方が優先されるに決まってる。春はお前のお陰で正気を取り戻せたってことだぜ。春の中の本能っていう一番大切な部分で、秋哉、お前の存在が春のことを守ってんだ」
「――え?」
思いがけないことを言われて、秋哉の目が丸く見開かれる。
「オレが、ハルを守ってる?」
「ああそうだ。春もお前を守ってるけど、お前も春を守ってるんだよ」
「……」
「互いに守り合ってんだ」
夏樹に再びそう言われて、秋哉はパッと顔を輝かせる。
「そっか、オレもハルを守れてるってことだな」
「ああそうだ。だからどんなことがあっても、春は無茶なことはしねぇし出来ねぇ。俺がダメでも、秋哉、お前が春を止められる」
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