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冬依の言葉に秋哉はびっくり驚いた顔をする。
「トーイを誘えって。なんだよお前、王族になんて興味があったのか?」
「そりゃあ、あるに決まってるよ。ジェイドっていったら、アラビア国の中でも有数の石油産出国だよ。ジェイドの王族ともなれば、世界中のVIPとつながりが出来る。そんな人脈、これ以上ないくらいのボクの財産になるじゃないか」
「……冬依、くん?」
一番側で聞いていた鈴音は驚いて目を白黒させる。
だが秋哉は、
「そっかー、ジェイドってすげー国なんだな。サシャム」
鈴音とはまったく違うところに感心してみせた。
「いい国に生まれたんだなサシャム。これからも大変だろうけど頑張れよ」
そして、サシャムを激励した。
サシャムは、
「――ふふっ」
ついに耐え切れないという風に吹き出す。
「はははははっ!」
声を出して笑った。
「……サシャム?」
サシャムの笑顔なら何度も見てきたが、よくよく思い返してみれば、声をあげて笑うなんて、見るのは初めてだ。
でも今は、
「あはははっ。おかしいアキヤ。アキヤの兄弟みんな、ものすごく仲がいいんだね」
屈託なく笑うサシャムは、ずいぶんと幼くみえる。
いやこれが本当の12歳のサシャムなのだろうか。
「おう、サシャム!」
サシャムに言われて、秋哉はぐんと胸を張ってみせる。
「オレたちの仲は最強だぜ。なんたって全員、大事な兄弟だからな」
秋哉の思考はものすごくシンプルで、だからこそ明確だ。
『大事な兄弟』
それ以外に、理由も理屈も必要ないのだ。
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