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「凄おい三面ビュー。都心の夜景一人占めですね!」
「もう見飽きたよ」
「あ! 真山さんあれスカイツリーですよ!」
「知ってるよ」
「満月が照明代わりだなんて、なんてロマンチックなの」
「省エネかよ」
「……」
なんて夢のない。窓にへばりついてはしゃいでる自分がすこぶる可哀想になってきた。そんな私を、チャリ、と鍵の束が笑う。
窓を見向きもしない真山さんが鍵を何処かに置いたのだ。
会話が、音が、プツと途絶えた途端に緊張の音色を奏でる。
「っ、真山……さん?」
窓に映るスーツ姿の圧力は、指先一本肌に触れずあっという間に私のコートを滑り落とした。ニットの襟を引っ張り、肩からずり下ろし、ヴァンパイアがするように首筋に唇を這わせる。
「も、もうですか?」
「もうだよ」
「もっとゆっくり話してからとか、っ──や、痕つけないで」
「無理。つけるよ、見えるとこにも見えないとこにも」
軽い気持ち……ではないけど、生半可な覚悟でオトコの部屋に上がり込むものではない。
ましてや、このひとの。
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