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「それだけじゃないとしたら?」
「……え?」
「ほんとうにお前に気があるとしたら」
淡々と見下ろす眼差しの奥に何が見えているのか分からない。
プライベートでももちろん仕事ですら絡んだことがない、同部署であっても遠い遠い存在なのだし。
ついに私にまで手垢を付けようと言うの。
「もう、からかわないで下さい。私が誰にも相手にされないからって同情されたくないです」
「同情ねえ……お前自分がどんな目で見られてるか知らないだろ」
「へ?」
「一度はオネガイしたい女子社員No. 1、桐谷ましろ」
「オネガイって」
「野暮なこと聞くなよ」
──それは驚愕の事実、私そんなに人気あったの?
まあ今の言い方だと人気というよりカラダ目当てのような気もするけど。この際それすら有り難い、三度の飯より恋人が欲しい。
入社して4年、一人も彼氏がデキないなんて哀しすぎる。男沙汰のない原因が解ってはいても、床に両手を付き思いっきり凹む。
──でもその話がほんとうなら私にもまだワンチャンあるのかな……!
「なら男社員に何て呼ばれてるかも知らないんだ?」
思わぬ吉報が舞い込んだことで彼女を追うことも忘れ、すがる目つきでコクコク頷いたのだが。
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