Prologue

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 真山さんほどのオトコがこう言ってくれるなら即飛び付くのがオンナの正しいあり方だと思う。  だけど私は遊ばれたいわけじゃない、恋愛がしたいのだよ。  ──な、流されるまじ。  デスクに三面囲まれているし、唯一の出口は真山さんで塞がれている、逃げ場などない。せめてもの抵抗で、顎に掛かった指を振り払うように首を振る。 「ま真山さんもご存知のはずです、私が誰にも相手してもらえない理由。社長が怖くないんですか?」 「明日辞令が下るんだ、来週明けから此処の部長になる」 「それはそれはおめでとう御座います。て、今の話となんの関係がっ」 「昇進祝いくれない?」 「へ?」  たぶん、私が社長の何だろうが真山さんには全然関係のないことで。誰もが超えてくれなかった一線を、このオトコは一瞬で超えてしまった。 「味見させてよ」 「っ──」  聞いたことがある。真山さんは飛び抜けた野心家で、超えるハードルが高いほどポテンシャルが高まるのだと。  仕事においての契約がまさにそう、「これは絶対に無理だ」と言われている契約ほどアッサリ取って来たりする。  要は、私を口説くのもそれと同じなんだろうな。
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