Prologue

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 女子社員人気爆発中の野獣のこと。100%オチたと信じて疑ってなかった獲物にバッサリ振られたのだ、絶句するのも無理ない。  ならばと、この機会に言わせてもらうことにした。 「だって、使い古しの口説き文句囁かれても全っ然心に響かなくて。伝わった本気度かろうじて3%ってとこです。一瞬胸きゅんしちゃった自分が恥ずかしいです」  噂通りである。広く浅く見境なく女子社員に手を出しまくってるだけ。現に私なんかにまでその余波が及んできた。 「ショックです、ウチのエースがここまで女性にだらしのないひとだなんて」  さっきの彼女は例外みたいだったけど……うん余程タイプじゃなかったに違いない。 「手当たり次第口説くとは乙女心馬鹿にしすぎもいいとこです。そんでもって私はスケコマシヤローなんて御免です──以上!」  失礼ついでに何とやら。真山さんの顔に唇を近づけ、ちゅっとキスを落とす。 「ではキスをしたので帰ります、お疲れさまでした!」  ここまで一気に捲し立てた私は静かなる野獣を一人残し、オフィスからエレベーターまで一息に駆け抜ける。  追っ手は来ないようだ。到着したエレベーターの箱に入り固く拳を握った。
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